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『高い城の男』が描く「もしも」の世界、知識と想像力が織りなす傑作SF。【ネタバレなし感想】

実際に起こった歴史とは異なる、「もしも」の世界を描いたSF小説『高い城の男』。

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この作品は、日本とドイツが第二次世界大戦に勝利し、アメリカ合衆国が分割された世界を舞台にしています。

 

当時の宗教や政治の知識が必要とされるため、理解には苦労することもあるかもしれませんが、一度読んでみる価値はあると思います。

 

ディックにしてはSF要素が少し抑えめだったように感じました。

しかし特にディックらしさがあったなぁと特に印象に残ったのは、

易を使った占いに関するシーンです。

ディックは詳細な描写を通して臨場感を伝えることに成功していると感じました。

 

また、登場人物たちの性格も深く描写されており、

物語の中で彼らが抱える問題や葛藤が、読者の心に強く訴えかけてくるものがありました。

 

私自身は、この作品を読み終えた後、

世界がもしもこうなっていたらどうなるだろうと、さまざまな想像を巡らせることができました。

 

そうした想像力を刺激する、本当に素晴らしいSF小説であると感じました。

是非一読をおすすめします。

 

今読み返したら昔読んだ時より深く理解できるかなぁ。

 

他にもう『ユービック』『流れよ我が涙、と警官は言った』も

読んだのでおいおい感想を書いていきたいと思います。

フィリップ・K・ディックのこのシリーズの表示もオシャレで好きです。

 

 

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【ネタバレなし感想】森博嗣『黒猫の三角』

読了日

2015年12月29日

感想

かなり楽しめた。

ニンゲンがニンゲンを殺すこととはどういうことか考えさせられる。

主要な登場人物がかなり個性的かつ魅力的で

この人たちのこれからやこれまでの話を読んでみたいと思った。

結末にも良い意味で裏切られたし、

あまり他の小説で見たことのない手法が用いられていたし新鮮であった。

細かく語られていない部分にも考える余地があり、時間を置いて再読したいと思う。

 
過去の記事

【ネタバレなし感想】井上真偽『その可能性はすでに考えた』

細かい知識と緻密なトリック。

作者のミステリに対する強いこだわりを感じる。

既存のミステリに対するアンチテーゼのようでありながらしっかりとミステリ。

謎解きに特化するのではなく、

動機やストーリーも読者を置き去りにしないものになっている。

結末も含めて。

 

個人的にはフーリンの神の捉え方がしっくりきた。

このような美しい自然を作り出した神が、

何故人間という生き物をこんなにもアンバランスで利己的なものにしたのだろう。

 

 

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』【一言読書感想】※ネタバレなし

 

内容紹介(出版社より)

1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、ドイツ軍の襲撃により突如奪われる。母を殺され、復讐を誓った彼女は、女性狙撃小隊の一員となりスターリングラードの前線へ──。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。

内容紹介(「BOOK」データベースより)

独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。驚愕のデビュー作。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞、2022年本屋大賞受賞

著者情報(「BOOK」データベースより)

逢坂冬馬(アイサカトウマ)
1985年生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒、『同志少女よ、敵を撃て』で、第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

 

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【読書感想】オルダス・レナード・ハクスリ『すばらしい新世界』

1932年に書かれた本。

この本に描かれているディストピアは全くのファンタジーとは思えない。

幸福とは何か、自由とは何かを考えさせられる。

ソーマという名前の麻薬で強制的に不安感を消す事。
争いも老いも病気も失恋も嫉妬もない。

強制的に多胎児を増やし、意図的に知能や能力を落としたものに単純作業をさせる。
しかしこのカーストの低い者たちは不幸と言えるのか。
より上のカーストの考えることができる人間たちの状態を想像することもできない。
劣っていることに悩むことすらできない。
この世界では一番上のカーストの者ですら意図的にある範囲の決められた構造の中に閉じ込められた壜の中の胎児である。

プロパガンダが横行している。
というか当然になっている。
これは今私たちが過ごす現実でも言えるのでは?
ただSNSが当たり前になって変わりつつあるような、ないような。
真実について沈黙すること。
効率的なプロパガンダ

これは現代の世界ともリンクするのではないか。
肉体的な操作はされていないとはいえ、
今の私たちはシステムによる洗脳を受けていないと言えるのか。
無神経な人たちは、“考えられる人たち”が悩みに悩んで自ら死を選ぶ事を理解できるのか。

資本主義がもたらすのは幸福なのか。
自由主義がもたらすのは幸福なのか。

家族、母親、父親、兄妹、恋人
これらは悩みを生むことは間違いない。
しかし無くていいとは言えないはず。

世界のあり方について、
構造に囚われずに考えていく必要はないのか。

自分たちの贅沢という名の正義のためには、
他者をだましたり戦争したりするのは黙認されていいのか。

裁きの基準となる法は、
社会を構成する人間たちによって定められる。
神ではない。

産業文明は禁欲しないことで初めて可能になる。

産業革命が起こり、中央集権化が進んだのか。
各国政府が全体主義的になる。
権力を分散して自助を推進しようとする大規模な大衆運動だけが現在の国家主義への傾斜をとめることができるがそのような気配はない。

『幸福の問題』とは、
どうやって人々に隷属を愛させるかという問題だ。

グローバリズムナショナリズムのどちらかしか道はないのか。

危険なのは科学そのものでは無く、
操作する人間と体制にあることは明確である。

ディストピア系のSFは、
哲学とか社会学がテーマになりがちで
実は他のジャンルより現実にダメージがある。

と私は思うのです。

 

 
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【読書感想】辻村深月『ツナグ』

辻村深月さんの本って
「自分のために書かれたんじゃないか」
っていう幸福な勘違いをさせてくれる。

自分が名刺代わりにする本は、
同作者の『凍りのくじら』。

この作者が書く、
主人公から見た“周囲の人”に対する感情は
スゴくしっくりくる。

家族の描写が生々しくて温かい。
父や母、祖母という存在の役割と責任。
家族間の苛立ちと愛情。

依頼する人とされる人、
さらにツナグの視点から見た依頼者と
その会いたい人。

人が考えてることが他の人からは見えないことには良さと悪さがある。

自分を客観視して捉えた姿と、
実際に他の人から見える姿は異なる。
これが興味深い。

“失われた誰かの生は、何のためにあるのか。
どうしようもなく、そこにある、逃れられない喪失を、
自分たちはどうすればいいのか。”

死者は生者のために存在していいのか。
生者の欺瞞ではないか。

“ツナグ”という言葉のダブルミーニング

お祖母ちゃん子の自分には刺さった。
歩美の最後の決断が特に良かった。
こんな高校生おる?

生きている間にできるだけ話しておこうと思った。

 

 
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真梨幸子『殺人鬼フジコの衝動』【tweet読書感想】

 

 

 
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